今回は7thアルバム「Märchen(メルヒェン)」についてお話していきます。
カラオケでセリフまみれの曲に出会った事、ありませんか?
それ、サンホラかもしれません。
一部では「サンホラファンは怖い」なんて言われたりします、怖くないです!
というわけで、今回もSound Horizonについての解説をさせていただきます。
一人でも多くの方に聴いていただければ嬉しいです。
現在は配信でも聴けるので是非!
prime music(unlimitedじゃない方)でもprime会員なら追加料金無しで聴けます
Märchen(メルヒェン)
【このカッコ内】に書かれた言葉は「歌詞やセリフの引用」になります。
歌詞カードに書かれていない物も含みますが、実際に聴いていただければわかります。
テーマとキーワード
メルヒェンという名前の通り、グリム童話をモチーフにした話がほとんどです。
そして、最初と最後の曲を除いた7曲は、七つの大罪に対応しています。
そして、気になるテーマは「復讐」、キーワードは「イド」
舞台としては中世のドイツとして描かれています。
ジャケットはかなりダークな雰囲気。
それぞれの少女が殺害されているシーンが描かれています。
各曲解説
最初と最後の楽曲以外には、冒頭にドイツ語で「七つの大罪」に関する言葉が入ります。
宵闇の唄
主人公が目覚める話。
主人公「メルヒェン(以下メル)」は「井戸」で目覚めます。
しかし、メルは記憶を失っています。
手元には小さな人形が一つ。
その人形が語りかけます。
「復讐シヨウ」と彼女が囁く その声色は 何処か懐かしく
どうやら、すぐには思い出せないものの彼女とメルには関わりがあるようです。
人形の名前は「エリーゼ」
セリフパートは「藤田咲」さん、歌パートは「初音ミク」が担当。
(ちなみに初音ミクは藤田咲さんの声から作られました)
無機質な人形の雰囲気がこれでもかと打ち出されています。
実は、このメルが登場するのは2回目です。
この「Märchen」が発売される前「イドへ至る森へ至るイド」が初出。
歌の担当はサンホラの創設者「Revo」さん
ライブでは、各少女がアニメで描かれる中、一人だけ実写でした。
火刑の魔女
モチーフは「ヘンゼルとグレーテル」
大罪は「暴食」
ヘンゼルとグレーテル、と紹介しましたが、実はこの曲の主人公は彼らじゃありません。
原作では彼らを食べようとし、釜に入れられ焼かれる「魔女」
彼女こそが主人公です。
しかし、この曲では魔女ではなく修道女として描かれます。
なぜ魔女になったのか?それは、先述した「イドへ至る森へ至るイド」の三曲目
「彼女が魔女になった理由」で描かれています。
色々あって、改宗した彼女は、少しのイタズラを交えてヘンゼルとグレーテルを歓迎します。
数々の料理を出してもてなします、それは100%の善意でした。
ですが、物語は童話通りの結末を迎えてしまいます。
前半部分の修道女の声は「彩乃かなみ」さん。
なんと元宝塚!しかも月組のトップだったそうです。
余談ですが、この曲のカラオケ難易度は物凄く高いです。
歌も難しいんですが、歌詞が絵なんです。
何を言っているかわからない?言葉通りです。
黒き女将の宿
モチーフは「絞首架の男」
大罪は「強欲」
主人公は貧乏な少女
田舎出身の彼女は戦争に巻き込まれ、遠くの村へと売られます。
売られた先は「黒狐邸」、老婆が一人で経営する怪しげな店でした。
経営は苦しく、女将(老婆)は禁断の食材に手を出します。
最初は近場で偶然死んでいた人間の内臓を料理として提供、これが客に大受け。
しかし、食材の調達は困難。
「屍体が無ければ作ればいいじゃない」
狂気に陥った女将は側に居た少女の内臓を抉り取ります。
田舎の少女の声は「REMI」さん。
「少年は剣を...」以来数々のサンホラ作品に関わっています。
老婆の声はお馴染み「じまんぐ」
この曲では通称かまんぐ。
ちなみに、曲中で「ゲーフェンバウワー将軍に、続けええええええ!!!!」というセリフがありますが、
彼は「Chronicle 2nd」というインディーズ時代のアルバムに登場する軍人です。
サンホラの世界はこういった所で繋がりを見せます。
硝子の棺で眠る姫君
モチーフは「白雪姫」
大罪は「嫉妬」
「テッテレ王子」と紹介すれば聞き覚えのある方もいるかもしれません。
主人公は白雪姫本人、のんびり屋で平和に暮らす彼女は、王妃の嫉妬に巻き込まれます。
原作とは異なり、直接的に狩人を差し向け白雪姫を殺害しようとします。アクティブ。
家に帰らない事を約束し、狩人との交渉によって彼女は森の奥にある小さなお家に住み始めます。
やがて白雪姫が死んでいない事を知った王妃は、老婆に化け毒林檎を食べさせます。
ここは原作通り。
さて、白雪姫が眠ったところで、「テッテレ王子」が登場します。
幼女も老婆もイケる全身ストライクゾーンな彼は、遂に「屍体」に惹かれはじめます。
そして口付けをすると、白雪姫が目を覚ます。
流れは原作と同じ筈なのに、どうしてこうなった。
ちなみに、白雪姫の声はアイマスの「赤城みりあ」などで知られる声優の「黒沢ともよ」さん。
舞台公演にもご本人が出られていました。
そしてテッテレ王子の声は「鈴木結女」さん。
NINKU-忍空-の「輝きは君の中に」「それでも明日はやってくる」などでお馴染みの方です。
生と死を別つ境界の古井戸
モチーフは「ホレおばさん」
大罪は「怠惰」
アルバム全曲中最もキャッチーでポジティブな歌。
父を亡くした少女が主人公で、彼女は継母やその娘(妹)にいびられ続けます。
しかし、元来前向きな彼女は日々の仕事をこなしていました。
さて、彼女の父ですが、船乗りであったにも関わらず「井戸」に落ちて亡くなったそう。
どうやら、物語のキーは「井戸」にありそうです。
井戸近くで糸巻きをしていた彼女は、仕事道具を井戸の底に落としてしまいます。
(余談ですが、ここの歌詞にある「て」が全て発音されていない事から「手抜き」をしていたという考察も)
彼女は井戸に落ちて化死状態になるのですが、積極的に復讐はしません。
目覚めた草原で仕事に励む彼女、そんな彼女の前に現れた人物こそ「ホレおばさん」
陰日向なく働く彼女を認め、帰郷の願いを叶えてくれます(金のおまけつき)
結果的に復讐は遂げられる事になるのですが、真相は是非アルバムで。
少女の声は「cuei(セイ)」さん。
声質が明るく、歌詞の中でも何度もネタにされている気がしますが、気の「ceui」かもしれない。
ホレおばさんの声は「井上あずみ」さん
「君を乗せて」「となりのトトロ」「さんぽ」とお伝えすればピンと来るでしょうか。
薔薇の塔で眠る姫君
モチーフは「野ばら姫」、「眠れる森の美女」と言った方がわかりやすいかもしれませんね。
大罪は「傲慢」
今回も「テッテレ王子が登場」する回
主人公は野ばら姫、物語は彼女の生誕祭から始まります。
王様は国中に散らばる賢者を招き、彼女に力を与えようとします。
しかし、そこに現れたのは唯一招かれざる、十三人目の賢女「アルテローゼ」
アルテローゼは野ばら姫に呪いをかけます。
(ちなみにこの時に「知性」を与え損ねた為、野ばら姫はかしこさが低いとか)
姫が抱く運命。僅か余命十五年。
紡錘(つむ)にさされて、床に倒れて、死ぬがいい!
それに対抗するのは、アプリコーゼ
不吉な言の葉、退けよう。百年。
死んだと見せて、寝台の上、唯、眠るだけ!
...ダジャレじゃねぇか
Revoは時々こういうことをします。
野ばらの姫の運命やいかに?というところで曲が折り返します。
さて、ここで少し考察をしましょう。
呪いをかけた賢者「アルテローゼ」、
ドイツ語にすると「alte rose」であり、これを英語に訳すと「old rose」になります。
クリムゾンのオルドローズと呼ばれた魔女が「Elysion」に居たはずですね。
曲の最後に、アルテローゼは野ばら姫にとある呪いをかけます。
その呪いの結果、「野ばら姫の赤子は、森に捨てられ」ました。
一度「エルの絵本【魔女とラフレンツェ】」をお聞きください。
野ばら姫の声は「下川みくに」さん。
代表曲はフルメタルパニック!のOP「tomorrow」やFAIRY TAILのED「君がいるから」など
各賢者の声は「沢城みゆき」さん。
最近の峰不二子や、ヲタクに恋は難しいの「小柳花子」など
青き伯爵の城
モチーフは「青髭」、ジル・ド・レェと言えば伝わるでしょうか?
大罪は「色欲」
「色欲」という事もあり、このアルバムの中で最も歌詞がセクシャル。
主人公は伯爵の夫人である女性の目線で描かれます。
青髭が狂うまでの話、狂ってからの話、そして隠された秘密の部屋が開かれる...
女が本当に抱いて欲しいのは 肢体(からだ)ではなく魂(こころ)なのよ
青髭の声は「大塚明夫」さん。
メタルギアソリッドの「スネーク」や、「ブラックジャック」など。
ちなみに最初の方だけですが、公演はご本人が出られていたそうです。
伯爵の現妻の兄の声は「中村悠一」さんであり、ファンの一部からは中村三兄弟と呼ばれています。
メインのボーカルである夫人(最初の妻)の声は「栗林みな実」さん。
磔刑の魔女
モチーフは「憂悶聖女」
大罪は「憤怒」
元ネタの憂悶聖女は他の作品に比べ、知名度が低いのでざっくりと説明すると、
「処女である女性」が、神に『嫁に行かない』と誓います。
しかし、彼女の父親はそれを認めません。
困った女性は、神様に髭を生やして貰えるよう頼み、願いは叶います。
しかしそれに対し父親は激怒、磔刑にし処女は処刑されます。
そして処女は聖女になりました。
というのがあらすじです。
このアルバムで唯一復讐を遂げない話であり、メルの記憶を呼び覚ます重要な楽曲。
メルの手に乗る人形、エリーゼの面影は、聖女「エリザベート」のものでした。
後半のエリーゼが叫ぶセリフパートは鳥肌が立ちます。
そして、曲はそのまま最後の楽曲である「暁光の唄」に続きます。
この曲も、前作である「この狭い鳥籠の中で」に続く楽曲となっています。
暁光の唄
全てを思い出したメルは、正気に戻ります。
それは、「復讐劇」の終焉を意味しました。
物語がどういった幕引きをするのかは、是非ご自身で聴いてみて下さい。
隠されたメッセージ
さて、ここで各曲名をもう一度振り返ってみましょう。
しかも縦書きで。...縦書き?
磔刑の聖女
青き伯爵の城
薔薇の塔で眠る姫君
生と死を別つ境界の古井戸
硝子の棺で眠る姫君
黒き女将の宿
火刑の魔女
宵闇の唄
このように、教会の形になっています。
更に、先述した内容と見比べて欲しいのですが、中心である「生と死を別つ境界の古井戸」を中心に、
各曲が対応しています。
「テッテレ王子」が登場する「姫君」の話
それぞれん異名に色が付き、狂った男女の話
刑に処せられた女性の話
闇と光
ほんとにくい演出しますよね。
まとめ
いかがだったでしょうか?
今回はMärchenについて紹介させていただきました。
ちなみに、Märchenは何度か漫画化しており、新約の一巻が無料なので、
この機会にいかがですか?
参考資料(歌詞引用)
Sound Horizon 「Märchen」,キングレコード,CD, 2010年.
参考サイト
https://w.atwiki.jp/sh_2ch/
http://fanhorizon.info/