前回の記事では、篠原重工がいかにしてレイバー産業に参入していったかをお話しました。
今回はその続き、レイバー産業の歴史を追っていきたいと思います。
レイバーは、一般公募でつけられた名前だった
篠原重工は、SIR-90という、「第一号ロボット」を製作していました。
しかしこれは開発コード、一般販売する際には名称が必要です。
そこで、篠原重工はSIR-90の愛称を、一般公募で開始。
採用者には、リリース後実機を1年間無償貸与するという破格の条件付きでした。
そうして、多数の応募の中から「労働」を意味する単語「レイバー」が選ばれ、この機体は「レイバー90」と呼ばれるようになりました。
ここから、「レイバー」の歴史が始まります。
レイバーは特殊車両
公道での使用を前提としていたため、レイバーは法律上「ロボット」ではなく、「特殊車両」として扱われます。(ブルドーザーやパワーショベルと一緒)
ナンバープレートやウィンカーの設置も決められ、レイバーは一般企業に受け入れられていきます。
ちなみに、歩行方式が2足歩行だろうが、車輪による走行だろうがレイバーである以上、特殊車両として扱われます。
こうして、レイバー90は1992年に無事リリース。
4つ足に車輪がついた下半身と、2本1対の作業用マニュピレータを組み合わせた機械は、多くの民衆にロマンを感じさせます。
新車販売価格は約3億円でした。
KV-93 ぴっけるくん
篠原重工は、新たな廉価版レイバーも考えていました。
1993年にリリースされた「KV-93 ぴっけるくん」。
これは、三足歩行式のレイバーであり、使用を山岳地帯に限定したことでマニュピレーター(指)を廃止、本体価格を1.5億円まで抑えました。
ちなみに、漫画版はアーリーデイズ(旧OVA)で暴れ回っていた赤い三脚レイバーこそが、このぴっけるくん。
菱井インダストリーの参入
さて、篠原重工は順調にレイバーを販売しますが、他の企業も黙っているわけがありません。
ここで参入してくる会社が「菱井インダストリー」、現実で言う三菱の傘下会社です。(四菱という会社がある)
レイバー90から遅れること2年、1994年に「HL-94 ギガント1000」の販売を開始。
見た目は四足式の下半身に、2本1対のマニュピレータと、どう見てもレイバー90の真似でした。
しかし、豊富なオプションを装備することが可能で、柔軟性の高い運用ができる点で評判を呼び菱井インダストリーもまたレイバー産業として成長していきます。
SSL95 アスカ95
ここまで来ると二足歩行式のレイバーを出したくなるのが人情と言うもの。
篠原重工は、飛鳥重機のノウハウを吸収し、アスカ95を1994年に完成させました。
しかしこのアスカ95がとんだ欠陥品。
オートバランサーの不調により、リコール対象となります。
(複雑なオートバランサーに対して、ソフトウェアがついていけなかった)
すぐにでも改良した機体を出したい篠原重工。
しかし時は1995年、東京湾中部地震が発生します。
HL-96 タイラント2000
1995年、アスカ95がリリースされ、リコール問題でバタバタしている中、菱井インダストリーは新たなレイバーを販売開始しました。
アニメや、ゲームエディションでもちょいちょい敵として出てくる飲酒運転代表レイバー、「HL-96 タイラント2000」。
本来であれば篠原重工と競い合う筈だった市場を独占して、菱井インダストリーは大儲けします。
SSL96 アスカ96
さて、1996年にようやく改良型である「SSL96 アスカ96」が販売開始しました。
しかし、市場には既にタイラント2000が出回っています。
当然アスカ96の売れ行きは伸び悩みます、が...
実はこのアスカ96、史上初のパトレイバーとなるのです。
詳しくは、特車2科の成り立ちの回でお話します、お楽しみに。
まとめ
さて、今回はレイバー産業の歴史を解説しました。
ぴっけるくん〜アスカ96までの時代を「第二世代」レイバーと呼んだりもします。
では、第三世代は?
そう、お待ちかね、AV98 イングラムの登場です。
これについても解説させていただきますので、お楽しみに!
最後までご覧いただきありがとうございました!
余談ですが、↓コレマジでオススメです、レイバーの歴史めっちゃ書いてます。
参考文献: 小川 涼,マスターファイル 起動警察パトレイバー 98式イングラム,SBクリエイティブ株式会社, 2021年 初版
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